横浜市の成人式で配布された、新成人におすすめの本のリスト『20歳の20冊』2022年版。
この②の記事では有隣堂ではたらく20歳のコメントとともに、ブックリストの後半をご紹介いたします。
※①の記事にて、斉藤壮馬さん・高尾美穂さん・横浜市「成人の日」記念行事実行委員会さんのおすすめ本をご紹介しています。こちらも合わせてご覧ください!
⇒ 20歳の20冊|横浜市の成人式おすすめ本リスト①
・書籍の紹介文は選者の執筆です。
・店頭フェア用POPの文面は有隣堂のスタッフが作成しています。実際のパンフレットには含まれません。
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ドリアン助川さんのおすすめ本
- 62年生まれ、小説やエッセイで活躍する作家・歌手
『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』
ドミニク・チェン
新潮社 / 1,980円(税込) / 9784103531111
不安定なこの世界で自信を失わずに生きていくためにはどうすればいいのか? 分断されてしまった人々がもう一度理解しあって生きていく道はないのか? これらの難問に、4カ国語を話し、CP端末を用いて「喋るヌカ床」まで作ってしまった超知性派の著者が、関係性の哲学」に注目し、新たな道を切り拓きます。爽快さに溢れた哲学書です。
『夜と霧』
V.E.フランクル:著 池田香代子:訳
みすず書房 / 1,650円(税込) / 9784622039709
ナチスの強制収容所から生還した心理学者が、あらゆる逆境を耐える人に対して、「それでも生きる意味はある」と理詰めで教えてくれる本です。極限の苦痛を経ても著者は微笑を失わず、「人生になにかを期待するな。人生があなたに問いかけているのだ」と言います。この言葉の深い意味を、ぜひ若いうちに考え、心の支えの一つにしてもらいたいです。
『希望のつくり方』
玄田有史
岩波書店(岩波新書) / 902円(税込) / 9784004312703
大学の研究者たちが集った「希望学」プロジェクトからの一冊です。希望とはいったいなんなのか? どうすれば希望を育めるのか? 東日本大震災の前年に書かれた本とあって、コロナ禍も含め、混沌としたこの時代に読むとちょっとなにかが足りない気がします。そこがミソ! この本を拠りどころにして、君なりの希望学を打ち立ててほしいです。
奈緒さんのおすすめ本
- 95年生まれ、映画・ドラマ・舞台などで活躍する俳優・カメラマン
『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』
村上春樹
新潮社(新潮文庫) / 605円(税込) / 9784101001517
ウィスキーをテーマにした旅の本です。私がすこし大人になり1番の変化はお酒を飲めるようになったことでした。2番目の変化は旅ができるようになったことでした。
お酒は場を盛り上げる為に喉を通り過ぎる液体ではないということ、旅は私たちの心にずっと残る大切な経験をくれるということを教えてくれる一冊です。
お酒が飲めるようになった私たちにぴったりの一冊
小説家の村上春樹がスコットランドとアイルランドに赴き、地元の人々とふれあい、ウイスキーを賞味するエッセイ。わずか120ページで豊かな写真も挿入されているので肩ひじ張らずに読むことができるだけでなはく、教養も深めることができる。
(有隣堂 横浜駅西口ジョイナス店 F)
『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと
若き外科医が見つめた「いのち」の現場三百六十五日』
中山祐次郎
幻冬舎(幻冬舎新書) / 880円(税込) / 9784344983779
私がちょうど20歳の頃に出合った一冊です。タイトルを読んで少しドキッとするかたもいると思います。私はそうでした。
それでも私たちはいつか人生にお別れをする日がやってきます。それはいつかわかりません。だからこそ一刻も早く皆さんが「きっといつかやろうと思っていること」を叶えられますように。
『家族シアター』
辻村深月
講談社(講談社文庫) / 792円(税込) / 9784062938488
大人になっても「家族」はときにねたましく、ときに恥ずかしく、ときにニクいものです。それでも私は家族のことを考えると涙が出るほど愛おしいと思います。
家族といえどすれ違い、家族だから分かり合えることがあります。辻村深月さんの小説は家族に限らず「少しだけ視点を変えると人間関係は変わるかもしれない」と、いつも思わせてくれます。
松岡佑子さんのおすすめ本
- 43年生まれ、静山社「ハリー・ポッター」シリーズなどの翻訳家
『ハリー・ポッター全7巻』
J.K. ローリング:著 松岡佑子:訳
静山社 / 1,980円(税込) / 9784863895201
『ハリー・ポッターと賢者の石』は7巻シリーズの第1巻。古い魔法のイメージを覆す独創的な世界に読者を誘う。
愛・友情・勇気に満ちた物語だ。登場人物は全員、魅力的な個性で読者を虜にする。ハリー・ポッターは幼くして両親を殺され、宿敵ヴォルデモートとの運命の戦いは、11歳から17歳まで続く。何度読んでもワクワクする。20歳からハリーとともに7年間で全巻をぜひ、読んでほしい。
『高野聖・眉かくしの霊』
泉鏡花
岩波書店(岩波文庫) / 528円(税込) / 9784003102718
明治文学の最高峰の一つで、幻想文学と呼ばれる作品。高野聖とは、高野山を本拠とする僧侶の集団。1900年に発表されたこの短編は、鏡花の名を高からしめた。
実は20代で読んだときは理解できなかった。半世紀を経て読み直し、初めてその文章の美しさに気づいた。若い旅僧が山中で出会う怪しい美女の物語を、20歳の皆さんも50年後に読み直してほしい。
『朗読者』
ベルンハルト・シュリンク:著 松永美穂:訳
新潮社(新潮文庫) / 605円(税込) / 9784102007112
15歳の少年ミヒャエルと36歳の女性ハンナの官能的な出だしから始まり、ハンナが突然姿を消す。7年後の再会は、ハンナを裁く法廷。ハンナはあることを隠し通すために有罪になり、18年間刑に服す。
ミヒャエルの苦悩と衝撃的な結末は、ユダヤ人迫害の問題というよりは、思索する人間の心の襞を描いて見事。まさに20歳で出合うべき本だ。
傍観者の罪は許されるか。人間の根本を問う名作
最初は少年と母親ほど年の違う女性の恋愛小説だと思いながら読み進めました。しかし、第2部で女性の秘密と過去の戦争の話で物語が急転。戦争で傍観者を含めた当事者たちの罪はどうしたら許されるのか、許されないのならどのように生きていけばいいのか、考えされられます。
(有隣堂 横浜駅西口店 M)
有隣堂のおすすめ
『思いがけず利他』中島岳志
集英社 / 1600円(税込) / 9784909394590
『夜が明ける』西加奈子
新潮社 / 1850円(税込) / 9784103070436
どんなに苦しく理不尽でも、
生きていく、続けていくことをやめないで
私たちの見ている世界は、ほんの一部であることを思い知らされた。世界にはどうしようもないくらい苦しく、理不尽な世界で生きている人がいる。そんな環境から逃げ出すことは恥ずかしいことなんかじゃない。生きるとは続くことであり、続くためには逃げていい。そう気づかさせてくれる一冊。
(有隣堂 横浜駅西口ジョイナス店 K)
『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
若林正恭
文藝春秋 / 720円(税込) / 9784167915827
『マーケターのように生きろ』
井上大輔
東洋経済新報社 / 1600円(税込) / 9784492046852
『アフガニスタンの診療所から』
中村哲
筑摩書房 / 740円(税込) / 9784480420534
選者による紹介文と選書は下記のパンフレットに基づきます
『20歳の20冊』2022
横浜市教育委員会/2021年10月発行
デザイン:丸塚久和
イラスト:みやしたゆみ
制作:一般財団法人 出版文化産業振興財団
このパンフレットのPDF版を、横浜市のWebサイト内、下記のページにてご覧いただけます。
横浜市民の読書活動推進 横浜市