櫂『櫂』/宮尾登美子/新潮文庫/990円(税込)外部リンク 
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喜和は15歳で岩伍と結婚する。
それから三十数年後に離別するまでの人生を心の動きから詳細に描いている。
大作家宮尾登美子の家族をモデルにした小説であり、すでに映画にもドラマにもなっている。
大正から昭和にかけて、女性は自立するすべがなかった時代の一女性の半生の物語、という大道の見方に加え、少し違った視点からこの作品を考えてみたいと思う。

岩伍との心のすれ違いは喜和が夫が始めた娼妓紹介業を決して好きになれなかったことにひたすら起因する。
岩伍は自分の商売が女子が貧困から抜け出すための唯一の方法だと主張し、人助けをしていると信じている。
平凡で不器用な喜和はその事に対する違和感を抱えたまま女将として岩伍が求めるような気の利いた立ち回りができず岩伍を苛立たせる。

たしかに、行動力がある岩伍と二人三脚で走るには喜和はお荷物だったのかもしれない。
果てに離別を言い渡されるのも岩伍の見地から見るとわからないでもない。

しかし、生活を岩伍に依存するしかない立場で生涯岩伍に信念に染まらなかった喜和は、本当は真に自立した女性だったのではと思えてくる。

私たちと時を重ねることがなかったほんの一時代前、戦争の足音、毎日の暮らし、貧困、の中で女性が自分で櫂を使い自分の舟を漕ぎ出すまでの壮絶な物語である。

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