香君 上『香君』(上・下)/上橋菜穂子/文藝春秋/1,870円(税込)外部リンク 
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日本が誇るファンタジー作家、上橋菜穂子さんの最新作は植物を巡る物語。

大地に根を張って動くことのない植物をテーマに、なんとスペクタクルな物語を生むのか。

今回も存分に楽しませていただきました。
あとがきを読むと上橋菜穂子さんが植物について書きたいと思い立ってから学びを深め、研究者の方々の力も借りながら3年もの月日をかけて草稿を書き上げた熱意に感じ入ります。

~お日さまの光を独り占めして立つ木は、幸福そうに見えても、周りと繋がりを断たれて、吹きさらしの中で、ひとりで生きていかなければならない。

本当は寂しいのかもしれないわね~

こんなふうに植物に想いを馳せる場面がしばしばあって、そのたびに知らない
世界を垣間見るようで、静かに心が震えます。

帝国、戦のある世界、人々を救うために主人公がひた走ります。
政治に邪魔をされて、正義は暗躍せざるを得ないという世界が描かれていてもどかしく、はらはらする場面が続きます。今回の主人公は、草木、花、虫、人・・・
多くのものの声を聞く者。
時に激しくまっすぐに行動しますが、ベースには「寄り添うこと」「声を聞くこと」がある。

さまざまな声を聞き、さまざまな人の手を借りて、希望を見出してゆく。

自分の行動が何に繋がり、どんな結果をもたらすのかを想像してほしいと願い、伝えることで人々に希望を与えていきます。

時に残酷さもある中で、心が透きとおっていくような美しい物語でした。
物語の中で「布を裏返して、表の模様を見ているだけでは気づかなった、その成り立ちに気づかせてくれる」という描写がありましたが、この本自体がまさにそんな成り立ちをしていると思いました。

植物と土の匂いがする物語、見えないところに広がっている世界を知りに行く旅。

花香る今の季節にこそ是非読んでほしい物語です。

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香君(上)
香君(下)
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