まとまらない言葉を生きる『まとまらない言葉を生きる』/荒井裕樹/柏書房/1,980円(税込)外部リンク 
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「まとまらない言葉を生きる」というタイトルがとても素敵だと思った。

著者は「被抑圧者の言語活動」、障害者運動や患者運動を行っている人たちの自己表現を専門として研究している。

例えば障害者がどのように声を上げてきたかを青い芝の会やハンセン病などの運動家の言葉を通して考える。
著者は、言葉が壊れてきていると危機感を持つ。
それは日本語の乱れという次元ではなく、人の尊厳を傷つけるような言葉が発せられることに怖れやためらいの気持ちが薄くなってきていたり、言葉への信頼を損なうようなことが生活圏だけではなく政治などの分野でも多く目にするようになっているからだと言う。

本当は「大切なものほど言葉にしくい」し、「スマートに要約したりすることができない」。
言葉には「魂」や「尊さ」や「優しさ」があるはずだ。

それらを具体的なエピソードとともに紹介したのがこの本だ。

例えばこんなエピソード。
介護施設でおでんが刻まれてでてくる。
それは事故を防止する観点からすると仕方がないことなのかもしれない。
そんなこと「どうでもいい」ことなのかもしれない。
しかし、おでんが「どうでもいい」とされたら、きっと、おでんに続く何かが「どうでもいい」とされてしまう。
以下引用する。

淹れたての香ばしいコーヒーを飲みたい。
四季折々のきれいな花を愛でたい。
天気のいい日は外に出て、気持ちのいい風に吹かれたい。
こうしたことも「どうでもいい」とされてしまうかもしれない。
こんな「どうでもいい」が積み重なったら、そのうち、生きていることも「どうでもいい」とされてしまう。 (P168)

ささやかな願望に牙をむき、相手を傷つけてしまう言葉を使っていないか。
日ごろ使う言葉を改めて考えさせてくれる魂の言葉にあふれた一冊です。

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