汝、星のごとく『汝、星のごとく』/凪良ゆう/講談社/1,760円(税込)外部リンク 
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『流浪の月』では、ままならない人生に翻弄される絶望と、人と人が想い合う切実さになんども胸を締めつけられました。

本作もそんな『流浪の月』と似た読み心地を持つ、とても力強い物語でした。

瀬戸内を舞台に、まだ自分のことすらよく知らない少年少女が、閉塞した環境の息苦しさ、家族の縁を背負うことにもがき、生きることや人を愛することを知っていきます。
なぎらゆうさんの小説を読んでいて思うのは、「人は経験をえて成長し、確固たる自分を獲得し、自分の人生を歩んでいく」というのは幻想じゃないか、ということです。
人生には時に選びたくても選べない選択肢を持ったり、選択肢すら持てない時もある。
同じ景色を見ても当然思うことは人それぞれであるように、同じ事柄に直面しても出す答えは違う。
人は迷い、つまづき、間違いを繰り返しながら、生を歩む。

なぎらゆう小説の登場人物には、「成長」なんていう言葉が生易しく感じられます。
確固たる自分を獲得する日なんて来ないかもしれない。
「これが自分の人生」だなんて腹に落として、安らかに過ごす日なんて来ないかもしれない。
後悔の波にもまれ、絶望に落ちても、かすかな光の方へと立ち上がって前に進む。

どうしようもなくつながり合ったいびつな人間関係がいくつか登場しますが、どうしようもなく生まれたそれらはとても力強く、彼らの生を時に翻弄し、時に支え、守ります。
正しさにこだわる必要なんてない、いびつだっていい、人の生は一度きり、という著者のメッセージがこめられているかのようです。

タイトルがなぜ『汝、星のごとく』なのかそれが分かる頃には、私はもう泣き疲れていました。
喜びと悲しみと、激しさと安らかさがせめぎ合って、胸がいっぱい。
心揺さぶる激しい読書になると思います。みなさま是非、心してお読みくださいませ。

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『汝、星のごとく』
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