歴史の屑拾い『歴史の屑拾い』/藤原辰史/講談社/1,540円(税込)外部リンク 
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「給食の歴史」「トラクターの世界史」など農業や食にまつわる現代を専門とする気鋭の歴史家の新刊。
歴史をどのように眺めているか、というのがとても面白い。
歴史の中で屑箱に捨てられてきたような具体的な事象に耳を澄ませます。
歴史はしばしば大きな物語として語られます。細かいことはわきに置いて論理的でシンプルな話にまとめていく。
しかし実際は右に揺れたり左に揺れたりしているし、一筋縄では全然ない。
もしかすると100年後今の世の中はコロナパンデミックに襲われた数年間としてまとめられ、ロシアによるウクライナ侵攻がトピックとして語られることになるだけになるかもしれない。
しかし、その中にはもうすこし具体的で生々しい人々の声があるはず。

著者は古文書をひっくり返したり、戦争体験者の声を聞きながらこれまでは見過ごされてきた声や物事を見つめていきます。
トラクターの歴史ではトラクターの技術的な歴史だけではなく、人と農業、人と機械、機械を使うことによって破壊される環境にも領域が広がっていく。
またむき出しになったトラクターのエンジンは轟音となる。
それ以前、農作業ではよく歌われていた労作歌に目を向けると人間と自然との関係性が見えてくるのではないか。

歴史の研究とはどういうものかという著者の思索はとてもスリリング。
わたしたちはどうしても大きな物語に目を奪われがちですが、それとは対照的な具体的な「屑拾い」のような歴史があるのだとあたらめて考えされられる一冊です。

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