462『小僧の神様 他十篇』/志賀直哉/岩波書店/704円(税込)外部リンク 
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先日、夏葉社『近代日本の文学史』を読み終わって、私の読書の歴史が塗り替わるようだった。教科書に出てきたような作家たちも、時代のうねりの中で躍動していて、あらためて名著が読みたくなった。中でも、文学史に何度も登場し、多くの人に慕われ、影響を与えた志賀直哉が気になってしかたなく、この本を手に取った。

教科書でも読んでいるし、知っているはずの志賀直哉の文章の美しさに感動した。
志賀直哉の小説はあまりにきれいで端的で澄んでいるから、時代背景が違う今でもすんなり入ってくる。文学史を知る前ではそのせいで、つまらないと思ったかもしれない。でも今は、それが当時どれほど新しいことだったかが分かる。

志賀直哉は小説が芸術であると分かっていたはじめの人の一人なんじゃないかと思う。技巧的でなく、クセがなく、写実的なのに、志賀直哉の文章だとひと目でわかる味がある。芸術家としてのものの見方に秘密がある、そんな気がした。
「センチメンタルな気分で書いたのに、それを見せずに書ききれたから気に入っている」など、志賀直哉は小説を「作品」として編んでいる。自己に耽溺しすぎることなく、見たこと感じたことを「作品」に投影し、自身でも一歩引いた地点から評価する。
クレバーな人だったんだろうな、と思う。

友を愛し、転居を重ね、家族を大事にしている。
生活もうんと楽しんだ人だと思う。
人としての魅力がにじむ。今さらながらファンになってしまった!


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