601『人形の家』/イプセン/新潮社/473円(税込)外部リンク 
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ノラもまた考えた。
廊下へ出てうしろの扉をばたんとしめたときに考えた。
帰ろうかしら。・・・・太宰治『葉』

20代前半に読み、わけもわからぬまま美しい文章としてずっと心に残っていたものが
20年近い時を経て、ああ、と腑に落ちた。

ノラの物語は、当時新しい女性像として世界中の作家にも影響を与えたのだと思う。
めくるめくように進む戯曲の中で、自身は自身で教育しなければならない、人形のままでは生きられないと気づくノラの決意は、すがすがしさを通り越して胸に痛い。
しあわせの意味を、真に生きることを、問われる。
イプセンは女性解放論者ではなかったという。
たしかに女性解放という側面だけでみてしまうと陳腐にわかりやすいお話だけれど、心をこめたふるまいも罰せられるべきなのか、蔑みを秘めた愛情は愛と呼べるのか、自分自身が自分に負っている義務とはなんなのか、等の側面を感じながら読むと、ノラのまっすぐな心根に貫かれる。

物語の芯がいつまでも古びない名作、読めてよかった。

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