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「◆小説」の記事一覧



『夢みる人びと 七つのゴシック物語2』 いつまでも余韻が残る魔法のような短編集

187『夢みる人びと 七つのゴシック物語2』/
イサク・ディネセン
横山貞子/白水社/1,540円(税込)
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はじめ、作者は題材にしているゴシック時代の人かと早合点して読んでいたのだが、20世紀に生きた人であったことに驚いた。
その時代に溶け込んで、自分で聞いた話をそのまま物語っているように感じられたからだ。

『エルシノーアの一夜』は、ばあやが田舎の屋敷から都会に住む老姉妹に会いに来る冒頭から引き込まれる。
若い頃に出奔した弟が、屋敷に現れるというのだ。
冒険を求めて、婚約者を捨て、海賊になったという弟。
実はこの弟は…。姉妹は弟に会いに田舎へ向かう。
その決意をする前の心の揺れや最後に弟にかける言葉、何とも人間らしく、皮肉で、家族ってこういうものだ、と。
幻想的でありつつとことん人間的な物語。
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『palmstories あなた』手のひらサイズのかわいらしい見た目ですが、読みごたえ満点の短編集

601『palmstories あなた』/津村記久子 岡田利規 町田康 又吉直樹 大崎清夏/palmstories/1,980円(税込)外部リンク 
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文庫サイズとも違う、手のひらサイズのハードカバー。

「あなた」とシンプルに刻印された表紙からは想像できないほど
5人の作家が「あなた」と「きみ」をめぐるバラエティに富んだ物語を綴っている。
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『成瀬は天下を取りにいく』天下を取るまで見守り続けたいので、続編を切に希望している

951『成瀬は天下を取りにいく』/宮島未奈/新潮社/1,705円(税込)外部リンク 
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こんな子と友だちになりたい。
成瀬と同年代だったら、そう思えたかどうかは正直、微妙なところだ。多分、理解できなかったと思う。

ただ、憧れたとは思う。
それくらい、彼女のやることなすことが痛快で、思ったことをすぐ実行に移すバイタリティは称賛に値する。
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『青い城』空想も現実も、想像の羽を羽ばたかせて豊かに感じるモンゴメリの世界

909『青い城』/モンゴメリ/KADOKAWA/902円(税込)外部リンク 
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『赤毛のアン』全11巻を読んだことは私にとって本当に大きなことだったんだと『青い城』を読んであらためて思った。
同じ出来事でも自分の心ひとつで受け止め方を変えられる。
なんて素敵、と受け止めるアンの激しい喜びの表現は私の心を明るくしてくれた。

おおげさなことはちっとも恥ずかしいことではなくて、人生をわくわく生きるコツ。子ども向けとは思えない辛辣さ、風刺もすばらしく刺激的なのがたぶんモンゴメリの特徴。
純粋さとウィット、賢い皮肉は両立する。毎日の楽しみ方を教わった。
考えてみれば、わくわくするとき、アンのように、島に吹き渡る優しい風を胸いっぱいに吸い込むような気持ちになっていると思う。
鼻をつんとすまして少し得意げな気持ち。
私の中の少女のモデル。
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『人形の家』物語の芯がいつまでも古びない名作

601『人形の家』/イプセン/新潮社/473円(税込)外部リンク 
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ノラもまた考えた。
廊下へ出てうしろの扉をばたんとしめたときに考えた。
帰ろうかしら。・・・・太宰治『葉』

20代前半に読み、わけもわからぬまま美しい文章としてずっと心に残っていたものが
20年近い時を経て、ああ、と腑に落ちた。

ノラの物語は、当時新しい女性像として世界中の作家にも影響を与えたのだと思う。
めくるめくように進む戯曲の中で、自身は自身で教育しなければならない、人形のままでは生きられないと気づくノラの決意は、すがすがしさを通り越して胸に痛い。
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『フランケンシュタイン』人の存在や善悪、心についてなど、考えたいことがたくさん生まれ出る

651『フランケンシュタイン』/メアリ・シェリー/新潮社/825円(税込)外部リンク 
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1797年生まれ、詩人に道ならぬ恋をして結婚した19歳女性、第二子誕生後の手遊びで書き始めた小説。
誰もが知っているフランケンシュタインの物語をこんな若い女性が書いたいたなんて!

こんなにも先が気になる牽引力のある強い物語がこんなに昔に書かれてていたなんて!これには驚かされたけれど、華麗な文章も、ちょっと待ってよと思う部分も、著者の生まれた時代や描いた年齢、数奇な人生を思うと自然に受け入れられる。
自然や人の描き方が美しく、登場人物の話し言葉も長い手紙も豊かな感情が伝わってくる。
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『街とその不確かな壁』すばらしさをすごく描き切ってくれたような気がして、読み終わってうっとりしている

437『街とその不確かな壁』/村上春樹/新潮社/2,970円(税込)外部リンク 
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『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』は読んだそばから忘れてしまう特別な小説で、ずっとその理由にうまく説明がつけられなかった。

ただ言葉のリズムを楽しみに行っている、私にとって心地よい音楽みたいな小説なんだと思い、繰り返し読んできた。

今回これを読んで、『百年の孤独』や『愛と精霊の家』『ホテル・ニューハンプシャー』を読んだ時も同じ種類の音楽を聴いていたんだと分かった。魔術的なのだ。
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