


『流浪の月』では、ままならない人生に翻弄される絶望と、人と人が想い合う切実さになんども胸を締めつけられました。
本作もそんな『流浪の月』と似た読み心地を持つ、とても力強い物語でした。
瀬戸内を舞台に、まだ自分のことすらよく知らない少年少女が、閉塞した環境の息苦しさ、家族の縁を背負うことにもがき、生きることや人を愛することを知っていきます。
なぎらゆうさんの小説を読んでいて思うのは、「人は経験をえて成長し、確固たる自分を獲得し、自分の人生を歩んでいく」というのは幻想じゃないか、ということです。
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